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maacoさん「デンマーク手工芸便りvol.2」連載エッセイ

こんにちは。maacoです。

今回のテーマは編み物(棒針編み)についてです。
編み物は北欧で手芸を学ぶにあたりとても楽しみにしていたことのひとつ。パターンやテクニックはもちろんのこと、編み物がどのように親しまれているのか知りたいと思っていました。1月に手芸学校にくる前、コペンハーゲンの毛糸屋さんに立ち寄ったのですが、所狭しと並べられた素敵な糸やおしゃれなパターンブックの数々に感激してしまいました!そしてこれから始まるニットの学びがさらに楽しみになったの覚えています。
デンマークで印象的だった編み物エピソードや、制作した編物作品についてお話します。

※デンマークの毛糸屋さんは種類豊富で色どりも豊か

いつでもどこでもニット!

北欧に来て感じるのはやはりニット人口の多さ。学校に集まる生徒の多くは素敵な手編みのセーターを着ています。中でも多いのは編み込み模様の入った丸ヨークのセーター。色合いもデザインもそれぞれの個性があって、とても素敵です。この前1週間だけ滞在していたタンポポのような黄色いモヘアのセーターを着たマダム、素敵だったなあ。

そしてすごいのは、皆さんいつでもどこでも棒針を持っていること。それも素敵な柳のバスケットに入れて!朝の集まり(皆で歌ったり、プレゼンテーションを聞いたりします)の時にもせっせと編み針を動かしています。最初はそれを見ておどろいたのですが、そのうち私もそこで編み針を手にする仲間の一人になりました。そして彼女たちに憧れて、セカンドハンドショップで見つけた大きなバスケットをついつい買ってしまったのは秘密のお話。

学校の外でも、電車やバスに乗ったときなど、バッグから棒針やかぎ針を取り出して編む人を見かけることがしばしばあり、編み物が人々の生活の中で身近にあることを感じます。そして何より驚いたのは、編むのが早くて、手元を見ないで複雑な模様を編んでいること!私も負けじと手元を見ずに編んでみたのですが、まだまだ修行が必要なようです。
※朝の集まりの様子


手法の違いも互いに学びあいながら

こちらに来てデンマーク語や英語で手芸を学んでみると、これまで自分がしてきた手芸の多くが日本式だったことに気がつきます。中でも編み物の授業では特に感じました。デンマークの棒針編みやかぎ針編みは、英語圏と同じく文章でパターンが説明されていることが多く、記号で表記される場合も日本とは異ったものがほとんどです。作り目などの技法でも違いに気づいた点が幾つかありましたが、それはまた別の機会にお話する事にして、今回は授業の様子と制作したセーターについてお伝えします。

最初の棒針編みのクラスでは、先生が基礎的な作り目から丁寧に教えてくださりました。クラスは初心者も経験者も一緒に学ぶので、助け合いながら授業は進んで行きます。少々混乱してしまった私には、先生が「オモテ」「ウラ」など日本語を交えながら楽しく教えてくださりました。また日本の編み物とのパターン表記の違いについて先生は「どちらが良いということではなく、双方がお互いの手法を学ぶことで得られることは多いはず」とおっしゃっていて、教室には日本のパターンブックがいくつか置かれていました。基本的な技法を学んだ後は、各自で練習したいテクニックを先生に個別で質問しながら学んでいきます。

初めてのオリジナルパターン

今回の作品は植物からデザインをつくるレクチャーから始まりました。まず図鑑やガーデニング雑誌などから草花を選び、それらのカタチを写しながら基本となるデザインを作りました。そして出来た原案を自由に組み合わせてパターンにしていきます。

いくつか試してみた中で、私がいちばんしっくりきたのがスノードロップの花。これをもとにセーターを作ることにしました。

今度は作ったパターンをどうやって編み図に落とし込むかを考えます。色を変えた編み込み模様やケーブル編み、地模様など色々なテクニックの中から、私は透かし編みを選びました。

作ったデザインを方眼用紙に写し、編み物技法のテキストを参考にしながら模様を考えます。作り始めたものの、編地を頭の中でイメージするのはやっぱり難しい。それを先生に相談したところ、「とりあえずサンプルを編んでみましょう!」ということで、とにかく編み始めることに。何事もやってみないとわからないですもんね。
※手芸学校からの散歩道で見つけたスノードロップの花

ほどかないで!

模様のパターン、糸の素材や色など、いろいろと悩んで決めたものの、いざ編んでみるとイメージ通りにはなかなか仕上がりません。

サンプルを編み進める途中、私は編地が気に食わなくてほどいていたのですが、その様子を見かけた先生から「ほどかないで!」と注意を受けてしまいました。せっかく買った糸がもったいないし、何より思った通りの物が出来上がらずモヤモヤした気持ちでいたので、「なんでそんなこと言うの…」と初めは思ってしまったのですが、先生曰く、失敗したサンプルも残しておくことで、作品制作のプロセスがよくわかるようになるとのこと。

自分は何故これが気に入らなくて、どう修正したのか。失敗作は捨ててしまったり、隠してしまいたくなってしまうけれど、試行錯誤した記録をきちんと残すことで、自分の作りたいものをさらに明確にすることができる。そして次の作品作りにつなげていく。プロセスを残すことは、自分の作品を作るための大切な学びだと思いました。そしてそれを実感しながらサンプルを作っていきました

※このようなサンプルをたくさん作りました

ついに編み始めます

やっと納得いくサンプルが出来上がったら、ゲージをとって作品の製図に入ります。座学で基本的な製図方法を学んだ後、各自のデザイン画をもとに、模様をどこに入れるか等、先生に教えて頂きながら決めていきました。そして遂にセーターを編み始めました。

私が選んだのはアルパカとシルクが混ざったモヘアのようなふわふわの糸。7ミリの太めの輪針で編んでいきます。

もちろん、ここはデンマークなので大好きな編み物も休憩をしっかり挟みながら!手芸学校ではティータイムが一日3回あり、初めは多いなと感じていたのですが、慣れてくるとこのヒュッゲタイムが待ち遠しくなるように。

これはある日の午後のコーヒーブレイクでいただいた、キャラメリゼしたココナッツがたっぷりのった「ドリームケーキ」。本当に夢みたいに甘くて美味しい!ブラックコーヒーにぴったりです。
※人気のドリームケーキ。好きなだけ切り分けて良いのでおかわりしてしまうことも

わたしだけのセーターが完成!

そして出来上がったセーターがこちら。手作りした作品はどれも愛着がわくけれど、今回はデザインから考えたので、特別な一枚になりました。他のクラスメイトが作っていたセーターも、手触りや色、デザインにこだわりと個性が溢れていましたよ。そして仲間からまた刺激をもらい、「次のニットはどうしようかな…?」と自然と考えはじめている自分に気がつきます。

出来上がったセーターを着てみると、自分の身体にピッタリ。やっぱり手編みのセーターっていいなと思いました。

手芸学校で学びながら、大切に作られた物を大切に着たり、毎日の暮らしの中で使う生活って本当に幸せだなあと思いました。手作りのある生活の豊かさを感じます。そして今度はあの人の為に作ってみたいな、なんて考えたりして。

次回はみなさまから頂いた質問に答えていきたいと思います!
それではまた。Hej hej!(またね!)
(2019年9月掲載時の内容です)
※こだわって決めた素材やパターンで楽しく編めました(使用糸等について作品公開しています

◆maacoさんの連載エッセイ「デンマーク手工芸便り」
「vol.1 はじめまして。デンマーク」
「vol.2 デンマークで編んだセーターのこと」
「vol.3 デンマークで学んだ刺しゅうのこと」
「vol.4 デンマークで学んだソーイングのこと」
「vol.5 デンマークのクリスマス」
◆maacoさんのインタビューはコチラ
プロフィール
手づくりの好きな両親のもと、幼い頃から手芸を始める。 自由学園中等科、高等科にて生活美術、裁縫などを学び、暮らしに寄り添ったものづくりの楽しさを深める。 2010年より、主にニットを用いた作品の展示、販売を開始。 2015年、「暮らしのなかの贈り物」をテーマにしたwebセレクトショップ 316(サンイチロク)をオープン。主に商品の企画・制作を担当。2019年1月デンマークに渡り、スカルス手工芸学校を修了後、グレーべ織物学校に留学中。(プロフィールは2019年の連載掲載時のもの)

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画像は全て(C)maaco

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