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店と出会い手しごとの魅力を知った子どもたちが、いつか…地元密着の手芸店で紡ぐ夢

東京・小金井市で「かわせみ手芸店」を営んでいらっしゃる中重藍子さん。開店から約3年、お店では手芸教室も開催。地域の人たちに手しごとの魅力を発信すると共に、「困った」「わからない」にも丁寧に対応してくれるかけがえのない場所となっています 。2020年5月には店をリニュアル。「これからも地元のお客様を大切にしていきたい」と語る中重さんに、お店を始められたきっかけや大切にされていること、未来への夢などをお聞きしました。

幼い頃から馴染んできた手しごと。いつしか地元に気軽に立ち寄れる手芸店を開くことが目標に。

まず、「かわせみ手芸店」を始められたきっかけや経緯について教えてください。

母がパッチワークを教えていたので、幼い頃から縫もの、編みものなど、いろいろな手しごとに馴染み、高校卒業後は服飾系の学校に進学しました。その当時から漠然とですが、「お店を持ちたいな」と思っていたんです。というのも、私が住んでいる東京・小金井市は、家族連れなどが多く住むベッドタウンなのですが、手芸の専門店と呼べるようなお店がなくて私自身も困っていたんです。小金井は便利なところなんですが、大手手芸用品店のある吉祥寺までの往復電車賃でミシン糸くらいは買えてしまうんですね。

縫もの経験がまったくないママさんがお子さんの入園バッグを作らなければならない時、必要な材料や使いやすい道具が揃っていて、やり方も教えてもらえるような手芸店が家の近くにあれば、手しごとの楽しさを知っていただけるのでは・・・・・そう考え、ないならば自分で作ってしまおうと思いました。そして、まず、勉強を兼ねて大手の手芸用品店に就職し、そこでまったく初心者を含めて多様なお客様の対応などを学び、2018年に「かわせみ手芸店」をオープンしました。

私一人で運営している小さなお店ですが、地元の商工会、店主仲間の方々、何よりお客様たちに支えられ、なんとか続けてこられたと本当に感謝しています。


素材も道具も手に触れて使ってみて購入してもらいたい。幅広いジャンルの教室も開催

品揃えなど、お店を運営されるにあたり、心がけていらっしゃることは?

品揃えについては、問屋さんなどにまめに足を運び、心を動かされたもの、実際に使ってみていいなと思ったものを揃えています。大きな手芸店は品揃えがすごく豊富な分、初心者の方などは自分の探しているものにたどり着けない、ということもありますよね。ここは、私一人でやっている小さなお店ですので、「このイメージのバッグなら、こんな布はどうですか?」「こんな道具もあれば便利ですよ」など、お客様ひとりひとりと対話をしながら、購入していただけるようにしています。

さらに、もうひとつ心がけてきたことが、できるだけ実際に素材に触れ道具を手に取ってみてからご購入いただけるようにしたいということ。手芸道具って包装の上から見ただけでは使い方、使い心地がわかりづらいと思うんです。ハサミひとつにしても、手にしてみて初めて「私はこれがいい」とわかりますよね。それと、洋裁をする時にすごく便利だと感じている道具のひとつに不織布に目盛りが付いた「アイロン定規」があるんですが、こういうのも実際に使ってみるとその便利さを実感できると思うんです。

そして、こうした道具に触れて使ってみる場としても、とても大事にしているのが、店内で開催している手芸教室です。教室でやり方を学びながら実際に道具を使ってみて、その良さを実感してから購入する・・・・・・こうしたことはネットにはないリアルな店舗ならでは良さだと思います。

実は、学生時代に子どもさん向けの絵画教室の講師のバイトをしており、手芸の分野ではレース編みの講師を教える資格を取得しています。大手の手芸用品店勤務時代にも体験講座の講師をさせていただいたりもしましたし、もともと、「伝える」ということが好きなんだと思います。

小物、アクセサリーづくり、洋服づくり、編み物、刺しゅう、小物など、いろんなジャンルの手しごとに馴染んできたという経験も活かし、ママさんたち向けの入園バッグ講座、羊毛フェルトづくり、子どもさん向けの指編み講座など、いろいろなジャンルの教室を開いています。また、お客様ひとりひとりのご相談、ご質問などにも対応しています。作りかけの作品を持ってきて、「ここがどうしてもわからないの」と聞いてこられる方もいらっしゃって、もちろん、こういうお客様も大歓迎です。

▼右/羊毛フェルトの猫が売り場のあちこちに隠れていてマスコット探しゲームを楽しむ子供たちも


ご来店をきっかけに手しごとの楽しさに目覚められた方はいらっしゃいますか?

実は、継続してお店に通ってくださる方のほとんどが、手しごと初心者の方です。例えば、2年以上通ってくださっているお客様は、最初、家にあるミシンを抱かえて(笑)「使ってみたいけど糸の通し方からわからない」とご来店されたんです。ミシンの使い方からお教えし、ポーチづくり、バッグづくりと少しずつ大物に挑戦され、今は、洋服づくりに取り組んでおられます。アドバイスを求めてこられる方も、「手芸本やネットの動画もみたけど、やっぱり、ここのやり方わからない」という方がほとんどですね。実際に手を動かしてみて、対話をしながら伝えることの大切さを実感しています。


手しごとの魅力を知った子どもたちが、それを自分の将来に繋げてくれたら…手しごとを次世代につなぐ源のひとつでありたい

子ども向けの教室も開催されているということですが、どんな経緯の方が多いですか?

主に小学校低学年、小学校中学年くらいのお子さんが通っていらっしゃるのですが、そのきっかけによって3種類のグループに分けられると思います。1つめは、小学校で家庭科が始まる際、親御さんは裁縫などが得意ではないので教えてほしいというグループ。2番目は、逆に親御さんができるからこそ、自分が教えると喧嘩になるから(笑)、「先生」に教えてほしいというグループですね。そして、3番目は、子どもさん自身が店頭の陳列などを見て、「やってみたい!」と親御さんを説得して通ってこられるケースです。先ほど申し上げた2つのグループに比べ人数は少ないのですが、みんな、まさに向上心の塊です。上達も速くて、接しているとこちらが刺激を受けてとても楽しいです。

子どもさんに教える際に心がけていることは、「無理強いしない」「楽しんで続けてもらえるようにする」ということでしょうか。基本のなみ縫いを学んでもらう際にも好きな色の糸を選んでもらったり、最初の2~3回目までは様子を見て、その子が得意なこと、好きなことがわかってきたらそこを攻めていくようにもしています。例えば、縫うのは好きではないけどボタン付けが好き、とか。飾るのが好きな子と組み立てるのが好きな子など、それぞれに合わせた工夫をしています。


5月にお店を移転・リニュアルされたとのことですが、今後の夢はありますか?読者へのメッセージもお聞かせください。

地元密着で地道にやっていきたいという思いは変わらないのですが、母がやっているパッチワーク教室のお隣に移転しましたので、教室の生徒さんなど、お客様の層が自然に広がっていけばいいなと思っています。手しごとの魅力を発信するための場を探していらっしゃる方にも、教室として使っていただければと思っています。

「手芸人口を増やす」といった大上段な目標を掲げているわけではないのですが、この店との出会いをきっかけに手しごとを楽しむ人が1人でも増えれば・・・・・・ささやかではあるのですが、お客様を大切にして、お客様を自分で育てるのが夢です。例えば、子どもの頃に当店の手芸教室に通ったり、1個のボタンを買ってくださったりした人が、ずっと続けてくれてデザイナーなどプロになったり、今度は、その生徒さんが教室の先生になって戻ってきてくれたら、どんなに素晴らしいだろうと思います。

私自身もそうですし、このサイトをご覧になっている方はそうだと思うのですが、手しごとは、どんな時も「元気の源」になってくれるのではないでしょうか。しかも、奥が深くて広がりがあるとも思うのです。たとえば、私自身いろいろなジャンルの手しごとをやってきた中で長く続けているのが、円形にカットした布を縫い縮めて作る「ヨーヨーキルト」なのですが、シンプルなものがつなげると小物になったりカーテンのようなインテリアになったりと、可能性は無限に広がっていくことを実感しています。

ぜひ、それぞれのペースで手しごとを楽しみながら続けていただきたいですね。小金井の近辺にお住まいで、わからないことや躓いていることがあれば、よろしければ一度、かわせみ手芸店にご来店ください。一緒楽しみながら解決して続けていきましょう!

手しごとを楽しみ続け、その魅力を次の世代へとつなげていく「拠点」として、地元に根を下ろした手芸店の存在がとても重要であることを実感しました。本日はありがとうございました。

※2020年05月時点の内容になります。

かわせみ手芸店さんの作品一覧はコチラです。
プロフィール
かわせみ手芸店 中重藍子さん
パッチワークの講師である母の影響で幼い頃から手しごとに馴染む。大学を卒業後、大手手芸用品店での勤務などを経て、2018年、生れ育った東京・小金井市に「かわせみ手芸店」を開店。こだわって選んだ素材や道具を対話の中で販売すると共に、手芸教室なども精力的に開催。手しごとを始めたい、楽しみたい、地元の人たちにとって頼れる存在に。2020年には、店舗を移転しリニュアル。(プロフィールは記事掲載時のもの)
てといとのプロフィールページはコチラ
詳細URL
かわせみ手芸店ホームページ
画像・テキスト資料出典
画像は全てかわせみ手芸店

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