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maacoさん「デンマーク手工芸便りvol.1」連載エッセイ

はじめまして、maacoです。2019年1月から半年間デンマークのスカルス手工芸学校で学び、現在もデンマークで手芸の勉強を続けています。手工芸学校での日々や北欧の手工芸について、お手紙を綴るようにお届けします。

※2019年の連載エッセイになります

スカルス手工芸学校は、デンマークの小さな町スカルス(Skals)にある手芸学校。デンマーク独特の教育機関であるフォルケ・ホイスコーレの1つで、 北欧各地からはもちろん日本からの留学生も集う、全寮制の学校です。


このお便りを連載させていただくことになりました、maacoです。 私はこれまで手芸作品の展示やウェブショップ運営を行ってきたのですが、 今年の1月から日本を離れ、デンマークにあるスカルス手工芸学校で学びを始めました。 この連載では、手工芸学校での日々や北欧の手工芸についての話を、お手紙を綴るようにお届けしたいと思ってます。どうぞよろしくお願いします。 第1通目として、今日は私が北欧に憧れるようになったきっかけと、はじめて学校を訪れた時のことを中心にお話ししたいと思います。

北欧手工芸との出会い

私が北欧の手工芸に出会ったのは小学生の頃。

手芸好きな母が持っていた雑誌に掲載されていた、デンマークの刺繍の記事を見たのが始まりです。そこには野の花が刺繍されたバッグや、キッチングッズに施された赤いクロスステッチ、いろんな形・模様のクリスマスオーナメントなどの写真と、それらにまつわるデンマークの暮らしが書かれていました。

「こんなに素敵で可愛いものに囲まれた暮らしが外国にあるんだ!」と感動した私はいつかデンマークに行こうと幼心に決意しました。その後、見よう見まねで刺繍をはじめ、それから棒針やレースなどの編み物、さらにお裁縫など他の手芸にも興味を持つようになりました。

スカルス手工芸学校

デンマークには、18歳以上のすべての人に開かれた、色々な種類の学びができるホイスコーレという寄宿型の学校制度があります。スカルス手工芸学校もこのホイスコーレのひとつです。ここでは半年ほどの長期から数日間まで様々なコースが選択でき、機織り、刺繍、編み物からリデザイン、陶芸などなど、幅広く手工芸やデザインを学ぶことができます。※1 

私はこの学校の存在を、とある刺繍作家さんの本から知りました。そして学校の名前をインターネットで検索しながら、私の心臓は飛び出しそうなくらいドキドキしていました。こんな素敵な場所で大好きな手工芸を学べるなんて!私が行きたいのはここだと確信したというか、心が震えるのを感じた瞬間でした。

その後またいくつかの出会いが結び合わされて、大人になった今、子どもの頃に夢見たデンマークの地で日々を過ごしている事は、本当に不思議です。 きっとここでの経験が、また新しい出会いへとつながってゆくことを信じて、毎日を大切に過ごしたいと思っています。

※1参考
https://www.hojskolerne.dk(The Association of Folk High Schools in Denmark)

学校に来た日のこと

ついにやってきた入校当日。

コペンハーゲンから約5時間、鉄道やバスを乗り継いで、ユトランド半島北部の町に向かいました。

学校に着いたのはもう暗くなり始めた夕方16時頃。周りは車通りが少なく、とても静かな場所です。すこし緊張しながら白い木の扉を開けると、にこやかな笑顔で校長先生が迎えてくださりました。

煉瓦造りの校舎の中は、明るい木目に白と絶妙な色合いのブルーが組み合わされた、かわいらしいお部屋が続いています。自分の部屋の鍵を受け取った後、学校を案内していただきました。校舎は主に1階が教室や食堂、2階が宿舎となっています。 教室は機織りや刺繍、ソーイング、編み物の部屋などに分かれていて、手芸好きにはまさに天国のような世界。皆が集まって作業できる談話室や、手芸やデザイン関連の本が揃ったお部屋もあります。

夜、これからこの場所で暮らして様々な手工芸に出会う日々にわくわくしながら、眠りにつきました。

※写真は晴れた日の午後の様子。煉瓦造りの校舎です。

授業のこと

スカルス手工芸学校の授業は、今日と明日はお裁縫、明後日からは編み物、という具合に、1日ずつスケジュールが区切られており、お昼休憩やお茶の時間を挟みながらじっくり制作に取り組むことができます。

基本的な技法を皆で学んだあとは、各々が希望する作品を作り始めます。クラスは少人数で、先生が個人の希望やレベルに合わせて教えてくださるので、自由に作品を考えることができます。学校に集まってくる生徒は、高校を卒業したばかりの若者から熟練の技術を持つ年配の方まで様々。共に机を囲み、ときにお互いの状況を見せ合いながらそれぞれの作品を仕上げます。 自主性を大切にしながら、経験者も初心者も一緒に学びあう、北欧らしい学びのスタイルなのだろうなぁと思います。

デンマーク人は自分の意見をしっかり持っている人々だ、と聞いた事があるのですが、ホイスコーレでの学びでもそう感じる事がよくあります。例えば、先生からよく言われるのは「あなたはどれが好き?」「あなたはどうしたい?」という言葉。優柔不断な私はこの質問にパッと答えるのが難しい時があるのですが、自分の中にあるイメージや思いをきちんと言葉や形にして伝える事は、私が自分自身を知る為にも大切なトレーニングだと感じています。

とはいえ、なかなか思ったように作業が進まない日や、私の語学力が乏しくて思いをうまく伝えられない時はもやもやしてしまいます。でもありがたいことに、授業の後にお茶の時間があり、美味しいお菓子と飲み物でリフレッシュする事ができます。そうして皆また作業へ戻っていく。 そんな風に過ごす1日はとても面白く、あっという間に過ぎていきます。

今日はここまで。 まだまだ語りつくせない事があるので、これから少しずつ皆さんと共有していきたいと思っています。 それではまた。Hej hej!(またね!)
(2019年2月掲載時の内容です)

※写真は食堂の様子。ここでお食事やお茶の時間を過ごします

◆maacoさんの連載エッセイ「デンマーク手工芸便り」
「vol.1 はじめまして。デンマーク」
「vol.2 デンマークで編んだセーターのこと」
「vol.3 デンマークで学んだ刺しゅうのこと」
「vol.4 デンマークで学んだソーイングのこと」
「vol.5 デンマークのクリスマス」
◆maacoさんのインタビューはコチラ
プロフィール
手づくりの好きな両親のもと、幼い頃から手芸を始める。 自由学園中等科、高等科にて生活美術、裁縫などを学び、暮らしに寄り添ったものづくりの楽しさを深める。 2010年より、主にニットを用いた作品の展示、販売を開始。 2015年、「暮らしのなかの贈り物」をテーマにしたwebセレクトショップ 316(サンイチロク)をオープン。主に商品の企画・制作を担当。2019年1月デンマークに渡り、スカルス手工芸学校を修了後、グレーべ織物学校に留学中。(プロフィールは2019年の連載掲載時のもの)

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画像は全て(C)maaco

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