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生活空間を自分らしくアップデートする小物を手作り。 カルトナージュの魅力を多くの人に

しっかりとした厚紙を組み立て美しい布や紙を貼り、オリジナルの小物を作るフランスの伝統工芸「カルトナージュ」。その楽しさが体感できるレッスンを行っているのが「アトリエQue sea sera(ケセラセラ)」を主宰するキャサリン弘子さんです。子どものころに親しんだフェルト細工からDIYまで、様々なジャンルの手しごとを楽しんできた彼女を虜にした「カルトナージュ」。その魅力についてお聞きしました。

色も、形も、機能も、思い描いた小物を手軽に。カルトナージュとの出会いは「運命」

カルトナージュを始められた経緯について教えてください

子どもの頃から手作りが大好きで、衣食住の色々なシーンを自己流ハンドメイドで楽しんでいました。小学校低学年の頃は友だちとフェルトの小物を作ったり、祖母に編み物を習ったり、暇さえあれば手を動かして何かしら作っていました。本屋さんの手芸本コーナーが大のお気に入りのスペース。大高輝美先生のフェルト細工の本などは私の宝物でした。

大人になり、文学部に進学して社会に出ましたが、手しごとを学びたいという思いはずっと心の奥底にあったのです。その思いが実現したのは、結婚・出産してから。家族の協力もあり、杉野文化学院の通信教育のコースで被服分野を学びました。この経験を皮切りに、学びたいという思いにすっかり火が付いてしまい(笑)、大学の生活芸術学科の通信課程に入学。そこでは、建築の知識に踏み込むなど、かなり奥深いところまで学ぶことができました。育児との両立が難しく卒業はできなかったのですが、大きな収穫は、自身の最大の関心のありどころが明確になったことでしょうか。そう、自分の最大の興味は「生活空間を自分らしく作りあげる」というところにあるのではないかと気づいたことです。以来DIYにもはまり、テレビ台まで作ってしまったこともあります。

 そんな私が「カルトナージュ」に出会ったのは、20年くらい前。DIYで庭づくりをするために通っていたホームセンターで手に取った雑誌に紹介されていたのを見て魅了されてしまったのです。ぜひ習いたいと思ったのですが、当時は、教室なども少なく、子どもが小さかったこともあり都心の教室に通うことも難しくてなかなか実現しませんでした。ところが、ある日、比較的家から近いカルチャーセンターに「カルトナージュ」を発見。しかも、講師を務められていたのは、以前雑誌で見た吉田晶先生!これは運命だ(笑)と感激し、2004年から習い始めました。やってみると、とにかく、楽しくて、楽しくて・・・・・・。夢中になってとりくんでいるうちに、ご縁もあって、いつの間にか、「教える側」になってしまいました(笑)。余談ですが、先生と同窓生だということがずいぶん後になって判明したのです。本当に運命、だと思いました。


キャサリンさんを虜にしたカルトナージュの魅力とは?

最大の魅力は、自身の生活空間にぴったりな小物を自在に作れることでしょう。収納ケースひとつにしても、今は100均ショップやネットなどでもそこそこの品質のものが簡単に手に入ります。でも、「この色、部屋の雰囲気に合わないな」とか「ちょっと大きさが・・・・・」とか、「ここにもうひとつ引き出しがあればいいのに」とか、ちょっとした不満があることも多いですよね。でも、カルトナージュで手作りすると、色も形も機能も、「こんなのが欲しい」という要望をすべてかなえることができるのです。

例えば、形については、最初は四角い箱やトレイのようなシンプルものからスタートしますが、複雑な形状も可能です。私自身、映画に出てくるような香水びんの形を作りあげた時は、本当に感激しました。さらには、使用するカルトンという厚紙は、しっかりとした厚みがある圧縮素材ですので、手作りとは思えないほど長く愛用できる堅牢なものができます。実際に、レッスンに通ってこられる多くの生徒さんも「これ本当に紙でできているの!?」と驚かれます。

しかも、そうした小物が比較的、手軽にできるというのも大きな魅力だと思います。カルトナージュの手法は、カルトンと呼ばれる厚さ2mmの厚紙をカットし立体に組み立てて好きな布などを貼りデコレーションなどを施すというものです。作業スペースも取りませんし、大きな道具なども必要ありません。例えば、DIYだと、それなりのスペースと工具が必要で、作業中の騒音も気になりますよね。私自身、ご近所にご迷惑をおかけしないように、近くで工事が始まるタイミングを見計らって(笑)作業したりし・・・・・・。カルトナージュなら、そうした気遣いは無用です。


布選びなどで個性を十二分に発揮できる

教室を開くきっかけは、どんなことだったのですか?

師事していた先生から「のれん分け」のような形で、2010年からカルチャーセンターの講師をするようになしました。同じ時期にガラス工芸作家さんが「くらりす」という手工芸品のボックスショップ兼お教室を萩山で開くことになり、出店させていただくことになりました。作品を発信するようになったのは、その時が初めてだったと思います。さらには、ボックスショップの一角でレッスンもしてみては、と勧めていただき、これが、地元教室を開くきっかけになりました。

この経験を通じて感じたのは、カルトナージュを通じて地域の交流の場が作れればいいな、ということです。カルチャーセンターには様々なところから様々な人が集まってこられて、とても刺激があって楽しいのですが、同じ地域で暮らす人たちと楽しさを共有しながらカルトナージュの魅力を伝えていくことができたら・・・・・・そんな夢を抱くようになりました。地元の雑貨屋「ファインドハウス」さんに突撃(笑)して、「スペースをお借りしてレッスンができませんか」とお願いしたことも。快く承諾していただき、こちらも今につながっています。現在は、「てといと」でも紹介された小金井市の手芸カフェ「まにあ~な」さんでのレッスンも行っていますが、少しずつ活動範囲が広がってきたのは、すべて、「人とのご縁」のおかげ。恵まれているなと心から感謝しています。



レッスン内容について教えてください。

各教室とも初回3回は基礎作品制作から入っていただきます。4回目以降は個々人のご希望・力量と作品の難易度を考慮して相談しながら進めていきます。カルトナージュは、設計図を書いて、それに基づいてカルトンをカットしていくところからスタートします。カルトンは厚みがありますので、いわゆる普通紙を切るようにはいきません。しかも、ここできっちりとカットしておかないと、出来上がりが歪んでしまうことも。

私自身は、ゼロからカタチが生まれるこの工程も好きなのですが、「ハードルが高い」と思われる人が多いので、カルトンはキット化しご用意しています。4回目以降も「こんな作品を作りたい」というご要望を聞いて、私が設計図を描いてカルトンをカットしています。思い描いている形状を明確に伝えるというのは意外に難しく曖昧なケースも多いので、しっかりとコミュニケーションをとりながら、設計図を描くようにしています。

小物に貼る布は、お好きなものをご用意いただいています。だから、同じキットでも、お選びになる布によって、ポップにもシックにもなるし、和風に仕上げられる方もいらっしゃいます。こうして個性が十二分に表現できるのがカルトナージュの魅力だといえるでしょう。生徒さんの中には手しごとに精通されている方も多く、得意な刺繡やタティングレースなどを装飾に使って小箱を仕立てたり、上手に小物を見つけてきて個性的に飾る方など、本当にステキな作品が生まれて、とても刺激を受けます。

「手作りだと思えない!」と生徒さんに驚いていただけるほどの高いクオリティーのものができますので達成感は高く、どの生徒さんにも喜んでいただけているのではないかと思います。ある生徒さんは私のオリジナル眼鏡ケースを作りたいとレッスンに参加してくださいましたが、とても気に入ってくださったのか、目的を遂げられた後も、自分の身の周りの小物をもっと自分で手作りしたい、と継続して通われています。


コード刺繍、写真・・・・・・「好き」を詰め込んだ作品を。地域交流にも一役買いたい

作り手としての夢を教えてください

好きなことやこだわりを詰め込んだカルトナージュ作品を作りたいと思っています。最近、ソウタシエというヨーロッパの伝統的なコード刺繍に関心を抱き、2020年に資格を習得しました。はじめて見た時、これは、カルトナージュに使える!と興奮しました。私は、どちらかといえば、布地の個性を生かしたシンプルなデザインが好きなのですが、ソウタシエで作ったものをひとつ付けるだけでインパクトのあるアクセントになると思ったのです。また、写真撮影が趣味なので、自分で撮った写真をコラージュするなど、工夫を楽しみたいです。



教える立場としての夢は?読者へのメッセージもお願いします。

何より、カルトナージュの魅力を一人でも多くの人にお伝えしていきたいと思っています。カルトナージュは過去に一度ブームになりました。本当に微力ですが、再び、そうしたブームを引き起こせる力になれればすごく嬉しいですね。紙と布でできているカルトナージュは環境にやさしい手工芸ですし、プラスチック問題がクローズアップされる今、時代に合った手芸ではないかと思います。また同時に、カルトナージュを通じて、地域の交流の場を作ることができればとも思っています。

現在は、コロナ禍により、対面のレッスンがなかなかできず、オンラインでの交流などの方法も模索中です。
インテリアとトータルコーディネートが楽しめて、長く愛用できるカルトナージュですが、布を貼る際に少しくらい歪んだりしても大丈夫。もちろん、「ここだけは慎重に!」というキレイに作る大事なポイントはしっかりお伝えしますので、手先の器用さ、年齢、性別にかかわらず、想像以上にステキな小物を作ることができるはず。私のレッスンでは、体験レッスンもご用意していますので、まずは気軽に、その魅力を体感していただければ嬉しいです。

※2021年5月時点の内容になります。

プロフィール
キャサリン弘子(笠利弘子)さん
Atelier Que sea sera主宰。東京都小平市エリアでレッスンを展開。 2004年よりAtelier NOVE吉田晶氏に師事。2010年よりカルチャーセンター(現在はよみうりカルチャー八王子)講師。2020年ソウタシエディプロマ取得。 NHK青山学園タッセル講座元講師。趣味 ハンドメイド カメラ テニス、合唱。
(プロフィールは記事掲載時のもの)
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Catharine's Cartonnage~カルトナージュで素敵にお部屋革命~
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Catharine's Cartonnage~カルトナージュで素敵にお部屋革命~

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