手芸との出会いが、悩みから立ち直るきっかけと新たな人生の扉を開いてくれた。今度は自分が、ひとりでも多くの人と「糸に触れる優しい時間」を共有したい。
かぎ針編みと刺しゅうのワークショップ「ドゥジャンテ」を主宰されている栗本さん。はじめての方でも手芸の楽しさが実感できるように、日々工夫を凝られている背景には「糸に触れて癒されてほしい」「糸の楽しさを伝えたい」という熱い思いがありました。栗本さんが、そう思うようになったきっかけとは?今後の夢は?お話をお聞きしました。
悩んでいた頃、糸に触れ笑顔を取り戻した。そのことをきっかけに、運命に導かれるかのように講師の道へ
「ドゥジャンテ」は、かぎ針編み、刺しゅうとも初心者向けだということですが、工夫されていることはどんなことですか?
「初心者の方があきらめずにひとつの作品を完成することができる」ということをコンセプトにしています。完成まで時間のかかる作品に挑戦するとなると、途中であきらめてしまいがちですよね。だから、ヘアゴム、ピンクッション、小さなモチーフ、キーホルダー、バッグチャームなど、原則的には1回で完成させることのできる作品を複数用意し、そこからご自身が作りたいものを選んでいただけるようにしています。
技法の伝え方も、試行錯誤しながら、私なりに工夫しています。例えば、「この穴の真ん中に針を通して糸を拾って・・・・・」というようにお教えしたとします。経験者の方には当然伝わるのですが、初心者の方の中には「真ん中ってどこ?」「糸を拾うってどういうこと?」と戸惑われる方もいらっしゃいます。私自身がそうだったから(笑)、すごくよくわかるんです。だから、お一人お一人に伝わる言葉を選び、できうる限り丁寧にお教えすることを心がけています。そうして教えてもらいながら手を動かして糸に触れているうちに、「あ、わかった!こうなってるんだ」と気づく瞬間があるんですよね。そうした時の生徒さんの瞳の輝きや、作品ができあがった時の笑顔に触れると、ああ、やってよかった、と、心から嬉しくなりますね。
栗本さんが、講師としての活動を始められたきっかけについて教えてください。
私自身が、糸に触れることで癒され、笑顔を取り戻したのが大きなきっかけです。元々、お菓子作りが好きで専門学校で学んでいたのですが、手芸については、自分のアクセサリーをビーズで作るくらいでした。すべての始まりは、転職活動が思うように進まず元気をなくしていた頃、友人が「ビーズのアクセサリー作るの好きだったでしょ?販売とかやってみれば?」と声をかけてくれたことでした。
その言葉をきっかけに、ビーズクロッシェに興味を持ち調べ始めると、まずは、かぎ針編みを学ぶことが必要だとわかりました。そこで、軽い気持ちでかぎ針編みのワークショップに参加したんです。経験者向けだったようで、初めてかぎ針編みを持つ私にはとても難しくて・・・・・・。でも、講師の方が初心者の私に対しても丁寧に導いてくださったおかげで、なんとかバングルを完成することができました。その時の達成感から、かぎ針編みをもっと知りたいと思って、初心者に基本の「き」を教えてくれるお教室探しを始めました。
教室探しの段階から、講師になることを目指されていたのですか?
いいえ、全くそんなことはないんです。お教室探しの際、インターネットで何度検索しても、毎回、なぜか同じお教室が出てくるんです。それが、かぎ針編みと刺しゅうの教室「Polivi」でした。「これは運命かも」と勝手に(笑)思い込み、行ってみたところ、知りたい!色々作れるようになりたい!という私の思いを叶えてくれる先生と出会いました。何度か通ううちにかぎ針編みと刺しゅうの両方を学んだ後にいただける “Polivi認定「ちくちくあみあみ」講師” の講座が気になるようになりました。
お菓子の専門学校に通っていた時代に、「自宅で教室が開ければいいな」と漠然と夢見ていたんですが、そのことが関係していたのかもしれません。「認定講師の講座が気になります」、と先生にお伝えしてから、継続講座をスタート。その時、自分が、転職活動で悩んでいる時に忘れていた、心からの笑顔になっていることに気づいたんです。糸って、こんな大きな力があるんだ・・・・・・と感動し、毎日ちくちくあみあみ。それがまた楽しくて楽しくて・・・・・・。かなり短期間で認定をいただきました。
そう、「Polivi」を主宰する先生と出会ったことで、「自分を元気にしてくれた糸の持つ大きな力を、一人でも多くの人に伝える」という新たな目標が見つかったんです。認定講師になった後は、自らワークショップを開催。2019年4月に自宅を建て直したことをきっかけにアトリエを作り、今にいたっています。まさに「運命」の出会いでしたね。
「手芸をするひとはこんな人」という思い込みを超えて、様々な人にその魅力を伝えたい。
ワークショップで講師を務められるようになってからの、印象深い出会いがあれば教えてください。
ワークショップに参加してくださる人の中には、「おばあちゃんが手芸をやっていたんだけど、教えてもらう機会がなかった」とか「小学校の授業で刺しゅうを習ったきりなんだけど、やってみたくなって」というような人がいらっしゃいます。そんな方に出会うと、多忙な日々の中で置き忘れてきたけれど、多くの人の心のどこかに、「糸に触れ無心になって手を動かしたい」という思いがあるんじゃないかなと感じます。そんな眠っていた思いをカタチにできるお手伝いができることは、とても嬉しいことです。
また、兄が車椅子ユーザーになったことをきっかけに、手が動く方の可能性を広げたいと思うようになりました。そして私自身、十年以上前に大病を患ったんですが、その際後遺症で左半身にしびれが残りました。病院で趣味のビーズ手芸をやっていたところ、手の機能がかなり早く回復したんです。そうした経験や出会いを踏まえ、自宅のアトリエは段差をなくし、テーブルも高めにして、車椅子のままレッスンに参加できるように工夫しました。車椅子の方が、糸に触れることの楽しさはもちろんのこと、その一歩先にある「ご自身の新たな可能性」に出会っていただけるような場にできればと願っています。糸に触れることで心が豊かになり、暮らしもさらに豊かにする一つの手段になるのではないでしょうか。
今後の具体的な夢を教えていただけますか?
現在、男性が「自分で使いたい」女性が「男性にプレゼントしたい」と思える作品が作れるワークショップを準備中です。最近は男性の作家さんも増えていらっしゃいますし、私のワークショップにも何人かの男性の方が参加してくださったんですよ。ある方はガールフレンドの方の付き添いでいらっしゃったり、ハンドメイドを仕事にしたい!とおしゃる方もいらっしゃいました。男性の方は発想がとても自由だと思うので、私自身も新たな発見がたくさんあるんじゃないかと、とても楽しみですね。
また、少し大げさかもしれないんですが、手仕事の価値みたいなものがもっと認められればいいなと思っています。世の中には安価で使い勝手もいい大量生産のものがいっぱいあるけれど、手を動かし、時間をかけ、思いを込めて作られた手作りのものは、量産したものにはない魅力があります。自分で作らない方、苦手な方などにも、作品などを通じてそうした魅力が伝わればいいなと思いWebShopやイベントで販売もしています。
またフェルトで立体的なお花を作る「フェルタート(R)」の技術を習得中。2020年度中に新講座を開講予定です。
栗本さんのお話を聞いて、手芸のもつ癒しの力や無限の可能性を感じました。今後、性別やライフスタイルなどの差異を超えて、ますます真摯に、より多くの人にその魅力を伝えていかれることと大いに期待しています。本日はありがとうございました。
※2020年01月時点の内容になります。
ドゥジャンテさんの作品一覧はコチラです。
プロフィール |
栗本 絵美子さん 専門学校でお菓子作りを学び、製菓の道へ。キャリアを模索する中で出会ったかぎ針編みに魅せられ、かぎ針編みと刺しゅうの教室「Polvi」で認定講師の資格を習得。手芸の魅力を一人でも多くの人に伝えることをライフワークにしたいと、ワークショップの講師として活動を開始。自宅の建て直しをきっかけにアトリエを作り、初心者向け教室「ドゥジャンテ」を開設。「初心者があきらめずに楽しめる」をコンセプトにした根気よく丁寧な教え方が好評を博している。(プロフィールは記事掲載時のもの) てといとのプロフィールページはコチラ |
ドゥジャンテさんのお教室 |
●かぎ針編み初めてさんのためのメニューが選べるワークショップ ・細編みのヘアゴム、ピンクッション、小さなバッグのバッグチャーム、まんまるモチーフ、しかくいモチーフ、カップホルダーなどから挑戦する作品を選べる。レッスン料3000円+材料費(600~2000円)曜日などは予約時にご希望に沿って調整。 ●刺しゅう初めてさんのためのメニューが選べるワークショップ ・ピンクッション・りんご刺しゅうのキーホルダー・お花刺しゅうのペンダント・イニシャル刺しゅうのバックチャーム・コンパクトミラー・ハンガリー刺しゅうのバッグハンガーなどから挑戦する作品を選べる。レッスン料3000円+材料費(700~1200円)曜日などは予約時にご希望に沿って調整。 ※かぎ針編み、刺しゅうとも、継続講座も開設。 ●浅草橋で月1回の「かぎ針編み」「刺しゅう」ワークショップを開講 ●「フェルタート®️」2020年度中にワークショップ開講 |
ドゥジャンテのインスタグラム |
dwuzyante.emicokurimoto/ |
詳細URL |
ドゥジャンテのホームページはコチラ |
画像・テキスト資料出典 |
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