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ヨーロッパで生まれ南米の暮らしに溶け込んでいる「バスティドール」を通じ、 思いを込めた「手の仕事」の魅力や楽しさを伝える

アメリカでは「long knitting board」とも呼ばれている木製の専用編み機を使って様々な編地や模様を創りだす「バスティドール」。16世紀のドイツで生まれ、スペインを経て南米からメキシコ、アメリカに溶け込んできた編み物技法です。そんなバスティドールに魅了され、その魅力を伝えているのが、染色家、インテリアデザイナーとしてのキャリアを持つ小林マリナさん。「手の仕事=手芸」を心から愛する小林さんにバスティドールの魅力や教室の雰囲気、今後への思いをお聞きしました。

特別なテクニックは必要なし!「毛糸にも針にも触れたことがなかった」初心者にも・・・・・・

小林さんは海外での暮らしがご縁でバスティドールに出会われたと聞きました。そのあたりを少し詳しく教えていただけますか?

もともと、自然が育んだ色や暮らしの中で受け継がれてきた織物などが大好きで、アメリカ在住中にはナホバ族の織物、ボリビアの織物を学びました。こうしたテキスタイルに関わる活動は私のライフワークだと思っています。とはいえ、転勤族の夫の妻、3人の子供の母となり、腰を据えて大がかりな活動をすることはなかなか難しい・・・・・・そんな折、かつて滞在していた南米で暮らしていた時の出会いがご縁で知ったのが「バスティドール」です。日本では馴染みが薄いのですが、南米で知り合った男性に聞いたら、「小学校の家庭科で習ったよ」と。そう、日本の「運針」のようなもので、暮らしの中で受け継がれ今も息づいているんですよね。そういうところに魅了されましたし、何より、木製の専用編み機と毛糸さえあればどこでもできますから、すっかり夢中になってしまいました。ちなみに、専用編み機自体も「バスティドール」と言う名称で、アメリカでは「long knitting board」とも呼ばれています。教室については、自分で使うものを作ったりプレゼントしたりしているうちに、「やってみたい」という人が出てきたのがきっかけで、十年くらい前からアメリカの先生が作られたテキストを自分で翻訳してアレンジしたテキストを使い、アットホームな雰囲気の中でお教えするようになりました。これも人のご縁ですね。

バスティドールは、棒針編みで作れるものなら何でも作れるとか。棒針編みとは違った魅力とはどんなところですか?

まずは、特別なテクニックがなくてもステキな作品が作れることでしょうか。子供の頃、小さな器具のピンに糸を渡していく「リリアン編」を楽しまれたことがある方もいらっしゃると思います。バスティドールの原理は、あのリリアンと一緒なんですよ。棒針編みだと糸の引っ張り具合によって編地がきれいに揃わなかったりしますが、そうした心配もあまりしなくても大丈夫。編地の風合いを変えるのも、棒針編みなら針の太さを変える必要がありますが、バスティドールは、編み機のスリットを調整するだけでできます。



難しそうに思えるのに、意外ですね!

そうなんです。実際に、生徒さんの中には、毛糸や針に触ったこともなかった男性の方もいらっしゃるんですよ。仕事の関係で我が家にいらした時、興味を持たれて、「大ファンのサッカーチームのロゴを織り込んだマフラーを作ることはできますか?」と言われて「できますよ。でも、デザインはご自身で作ってくださいね」とお答えすると、エクセルで作ってこられました(笑)。それをもとに私が糸の掛け方を考えて、ちゃんと完成させられました。

編み物超初心者の方の第一作がサッカーチームのロゴを編み込んだマフラー・・・・・・すごいですね!

それができるのが、バスティドールの魅力なんです。ちなみに、その方は、その後、チームカラーのネックウォーマーを作ってチームサポーターの方にプレゼントされたり、「バスティドールに出会って生活が楽しくなりした」と喜んでいただいています。こうした出会いが本当にありがたいですね。

表地と裏地を自在にデザインできるのも特徴。まずは「3色編」に挑戦!あとは、作りたいものを・・・・・・

作品を拝見すると、模様が編みこまれていたり、多色使いだったり、ふんわりした編地のものもあったりと、本当に多彩ですし、何より、裏地がとってもキレイ!何か秘密があるんですか?

これもバスティ―ドールの大きな特徴なんですよ。棒針編みは表が表編だと裏は当然裏編になるけれど、バスティドールは表地と裏地を同じ編み方にしたり、違う編み方にしたりと表と裏を自在にデザインして作品を作れるのです。表と裏の色を変えるリバーシブル編も簡単にできます。リバーシブルのセーターや小物も手軽に作れるし、ポーチのように裏が見えるものも編み込み模様を作っても裏地に糸が渡りませんから布を貼ったりする必要がありません。そうしたところが、バスティドールの編み物技法としての最大の面白さだと思います。

手仕事の楽しさや可能性が広がるバスティドールですが、日本で唯一とも言える小林さんの教室の特徴はどんなところですか?

教室というより、一緒に作品づくりやおしゃべりを楽しんでいる、という感じでしょうか。まず、初めての方には、編み方に慣れていただくために、3色編、すけすけ編、うね編の小物の3種類を作っていただきますが、その後は、それぞれがご自身の作りたいものを作っていただいています。帽子やマフラーといった小物を作っていらっしゃる方もいれば、ランチョンマットを作っていらっしゃる方もいて互いに「それ、ステキね、次にやってみようかな」と言い合ったりしながら楽しみを広げています。ちなみに、まず挑戦していただく3色編は、2色編をアレンジして私が考案したものです。

初めての作品が多色編というのは嬉しいですね。それにしても、それぞれが違うものを作っていらっしゃる生徒さんたちをお教えするのは大変じゃないですか?

確かに同じものを作っていただく方が教えやすくはあるとは思うのですが、自分が欲しいもの、大切な人にプレゼントしたいものを作る方が、作る時間も楽しいでしょ?そういうワクワク感をぜひ味わっていただきたいんです。先ほどお話した男性のように、初心者だけど大作に挑戦したい、という方にも自由に挑戦していただきます。どうしても難しいと思えば、基本的な作品に切り替えればいいだけですから。それに、手芸は、手の速い人もいれば、のんびり作る人もいますが、私は、それぞれの方のペースで楽しんでいただければと思っています。



唯一のお約束は「毛糸をムダにしないこと」。草木染のワークショップなども通じ、自然に育まれた色に囲まれた丁寧な暮らしの喜びを伝えたい。

アットホームな感じが伝わってきますね。

ゆるい(笑)教室だから、知り合いの方に「教えている、っていう感じじゃないですね」と言われたりもします(笑)。でも、ひとつだけ、必ず生徒さんたちにお伝えしていることがあるんです。それは、毛糸を最後まで使い切ること。ひとつの作品を作ると、どうしても毛糸が余ってしまうので、そんな余り毛糸を使ったキーチャームを考案してみんなで作り、年に1度の地域のイベントで作品と一緒に売ったりもしています。

小林さんの「手の仕事=手芸への思い」が伝わってくる“お約束”だと思います。最後に、今後の夢を教えていただけますか?

私のライフワークのテーマのひとつが「色」なので、色の知識や魅力を伝えていきたいですね。例えば、同じピンク色でも、肌がイエローベースの人とブルーベースの人で似合う色みが違います。そうした知識を皆さんに伝え、毛糸選びなどに活かしていただければと思っています。例えば、大切な人にプレゼントするものを作る際、「あの方だったら、こちらの色が似あうかしら」などと考えて作ると楽しさがより広がると思うんです。それと、歴史や暮らしの中で育まれてきた伝統的な色、文様、織物などの魅力を伝えていければと草木染や手紡ぎのワークショップも時折開催しているのですが、バスティドールとこうした活動を組み合わせていければステキだなと思っています。

自分で紡ぎ染めた糸で暮らしを彩るものを作る・・・・・・想像しただけでも、本当にステキです。本日はどうもありがとうございました。

※2019年12月時点の内容になります。

◆バスティドール工房さんの作品一覧はコチラ

※今回インタビューに使わせていただいた「森のテラス」は、小林さんがお教室会場としてもご利用されています。詳細はコチラでご紹介しています。

プロフィール
小林 マリナさん
アメリカ滞在中にナボホ族の織物、ボリビアの織物を学び、テキサス州ダラスクラフトギルドのメンバーとして活動。帰国後は建築設計事務所でインテリアを担当。工房アラクネでタペストリーなどを制作。帰国後、メキシコに伝わるバスティドールを知り、アメリカのテキストを自ら翻訳するなどして作品作りに邁進。10年前より教室で講師を務め、バスティドール工房を主催。草木染め・手紡ぎのワークショップなども開催している。(プロフィールは記事掲載時のもの)
てといとのプロフィールページはコチラ
小林マリナさんのお教室
■久が原クラブ教室(月2回)月謝/4000円
■森のテラス教室(月1回)月謝/2000円
■南青山SAWADA ITTO 土曜日クラス 月謝/4000円
詳細URL
バスティドール工房のFacebookはコチラ
画像・テキスト資料出典
画像は全て(C) エムデザインオフィス

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