1. HOME
  2. 手とひと
  3. 素材にもこだわり、使うほどに愛着がわく。そのまま出かけたくなるエプロンを手渡しでお届けしたい

素材にもこだわり、使うほどに愛着がわく。そのまま出かけたくなるエプロンを手渡しでお届けしたい

家事や仕事などの「相棒」であるエプロン。使い心地がよくて、付けたまま外にも出ることができるようなセンスのいいものがあれば・・・そんなわがままをかなえてくれる一着を作り、イベントなどで販売しているのが「糸と△洋裁店」。主宰者のよしだけいさんが生み出すエプロンは「いいもの」を知る大人を中心に支持を広げています。よしだけいさんのこだわりや、今後の夢などをお聞きしました。

ものづくりとファッションへの情熱に改めて火をつけてくれたのは「エプロン」だった

エプロンの製作・販売を始められたきっかけを教えてください

エプロン製作を始めたきっかけは、ある美容師さんとの出会いです。その方が身に着けていらっしゃったエプロンが機能的であると同時に街着としても十分に通用するほどオシャレ。すっかり心を奪われてしまい、さらに自分でもこんなエプロンを作ってみたい!という想いがあふれて、思わず、「エプロン、作らせていただけませんか?」と大胆にも(笑)お声をかけてしまったのです。以来、この美容師さんなどからたくさんのアドバイスをいただいて2019年に活動を開始し、2020年秋に「糸と△洋裁店」として本格的にエプロンの製作・販売をすることになりました。

ちなみに、「糸と△洋裁店」という屋号は、洋裁や手しごとを連想させる「糸」と、屋号を目にした方が自由な連想ができる△という記号を組み合わせたもので、それぞれに想像を膨らませていただければと思って名付けました。

 もともと、母がファッションの勉強をしていたこともあり、ファッションとものづくりが常に身近にある環境で育ちました。高校生くらいになると、独学でミシンを使ってシャツなどを作ったり、手仕事を楽しんでいました。高校卒業後は、ファッションに関わりたくて文化服装学院に進学、アパレル業界での販売や洋服製作にも携わらせていただきました。その後、結婚を経て、ものづくりからは少し離れてしまい、結婚式のようなイベントの際に自分の洋服を作る程度でした。それに、実は、エプロンについても、美容師さんとの出会いがあるまで私自身あんまり使っていなくて(笑)、馴染みのあるものではありませんでした。

でも、本格的に製作するようになって「エプロンの魅力」、そして、「作ることの面白さ」を新たに発見しました!試着したり実際に使うようになって、エプロンを使うことで仕事や家事は格段に快適になることが実感できます。しかも、デザインや素材によっては、オシャレ心が満たされるファッションアイテムのひとつにもなるのです。そんな一着がもし暮らしの傍らにあれば、ちょっとワクワクして豊かな気分になるはず――ものづくりやファッションに対する興味に改めて火がついて、私なりに奮闘中です。


洋服づくりのスキルも活かし、センスと機能性を兼ね備え長く愛用できる一枚を

製作の際にこだわっていらっしゃることはどんなことですか?

まず、デザインについては、ちょっとした外出などにも着けていただけるようなものを目指しています。市販のエプロンの多くは平面的ですが、私が手掛けるものは、洋服と同じように型紙を作り、立体的な縫製も取り入れています。こうした部分では、かつて文化服装学院で学んだことが活かされていると感じています。また、学校で出会った友人たちもとても大切な存在。今でも、いろいろなアドバイスをもらったり、とても助けられていて、本当に心強いです。

もちろん、エプロンと外出着のような洋服には違いもあります。エプロンは仕事や家事のような活動を快適に行うためのものですから、「付け心地」「着心地」「動きやすさ」によりこだわる必要があると思います。例えば、ひもで止めるタイプのエプロンを使っていて料理の途中でひもが落ちてきたりすると、ちょっとイラっと(笑)しますよね。私自身がそうなのですが、首に回したひもで肩が凝ったりする人もいると思うのです。日々の暮らしの中で使うものですから、自分でしっかりと試着して動いてみて、できる限りこうしたちょっとした不快感がないようなデザインを心がけています。

さらに、「長く使えること」にもこだわっています。日々の暮らしの中でいいものを長く大切に使うのが、本当のエコだと思うのです。だから、素材については、自然な風合いが楽しめると同時に使えば使うほど味わいが増す国産のリネンを選び、縫製する前に水洗いをするといった工夫もしています。もともと、職人さんたちが長く愛用してもらうことを目指して知恵を絞り、技術を磨き、それを結集させて作った日本製のものが大好き。エプロンを通じてその良さを私なりに伝えていければいいなとも思っています。


一人ひとりに“手渡し”する感覚で販売。こだわりが伝わっていることが最大の喜び

どのような形で販売されているのでしょうか?お客さまの反応はどうですか?

主に、いくつかの種類のエプロンを作り、お客さまひとりひとりに直接製品を手渡しできるイベントなどで販売しています。お使いいただく方それぞれのご要望やライフスタイルにぴったりのものをご提供できるようになることを目指しているのですが、「糸と△洋裁店」を始めて1年くらいと日も浅く、まずは、私の手掛けたものを知っていただきたいと思っています。

お客さまそれぞれのご要望に直接触れられることは、作り手として本当に勉強になりますね。例えば、「ここにこんなポケットが欲しい」といったご要望は、大歓迎!少しお時間をいただければカスタマイズにも応じています。また、先ほども言いましたが、できれば長く愛用していただきたいので、「使っているときに穴をあけてしまった」などという場合には、できる限り補修もするつもりです。「長く使える」という点では、例えば、プレゼント用の包装素材についても開けた後もちょっとしたインテリア用品として再利用できる蝋引きのものにするといった工夫もしています。


現在のお客さまは、30代後半からシニアマダムまで、言ってみれば「大人の女性」の方が中心ですね。大量生産の安価なものに比較すると価格帯がどうしても上がることもあり、「本当に自分が気に入ったものを選び長く使いたい」と考えていらっしゃる方にご購入いただいているのではないでしょうか。あるイベントで購入いただいたエプロンを次のイベントに「着てきちゃった」と着用されてこられたお客さま、「使えば使うほど良さがわかる」と言ってくださるお客さまなどに出会うと、「私の思いやこだわりがきちんと届いているんだ」と本当に嬉しく感激してしまいます。


男性用、キッズ用・・・・・スキルを高めていろいろな人の様々なご要望に丁寧に応えたい

これからの夢はどんなことですか?

エプロンは、主婦の方、美容師さん、料理人さん、飲食店やさまざまな店舗で働いておられる方、アウトドアを楽しまれる方など、いろいろな人に使われるので、使うシーンによって求められる機能やデザインも変わってきます。例えば、美容師さんだったら「ハサミなどを入れるところが欲しい」、料理人の方なら「ナイフを入れてもエプロンが傷つかず安全に持ち運ぶことができるポケットがあれば」といったご要望も考えられます。また、家事で使う場合でも、ライフスタイルが異なれば、ご要望も変わってくるでしょう。使う方の体形やお好みなどによっても欲しいエプロンが変わってくるのは言うまでもありません。こうした様々なご要望に丁寧に応えられる形で製品を作ってお届けすることが目標です。

製品のバリエーションとしては、男性が着用してかっこいいもの、男女兼用で使えるものもご提案したいですし、これまでにないデザインのキッズ用、親子用なども手掛けていきたいですね。

そのためには、作り手としてもっともっと勉強しなければならないと思っています。デザインの引き出しを増やすために、さまざまな洋服や雑貨などをできるだけチェックしたり、友人たちに積極的にアドバイスをもらったり、情報収集に努めています。スキルの面でも勉強したいこと、習得したいことはいっぱいあります!例えば、異素材を組み合わせることで機能面でもデザイン面でもバリエーションが広がると思うので、皮革の取り扱いを改めて学びたいです。また、自分がイチから手掛けた素材も使ってみたいので、染色にも関心を持っています。



他の人からの評価や要望が、作り手としての喜びを深め、進化の源泉になる

今後、自分の作品を販売したいと考えている方にメッセージを

私自身、自分の作ったものをこのような形で販売することになるなんて想像もしていませんでした。価格を付けるということ自体初めての経験でしたし、まだまだ始めたばかりなので、今でも不安はいっぱいあります。

でも、一歩踏み出してよかったと思っています。私のこだわりをわかってくださって「他では売っていないわ」と認めてくださるお客さまとの出会いは、想像以上に嬉しいものです。そして、そうした方からお聞きするご要望のひとつひとつは本当に勉強になります。勇気を出して自分の作品を人に見てもらい評価する機会を作れば、作り手としての喜びは大きく広がると思いますし、もっと頑張ろうという意欲も湧いてくるのではないでしょうか。

※2021年7月時点の内容になります。

プロフィール
よしだけいさん
文化服装学院で洋服づくりを学び、2020年、実用性とファッション性を兼ね備えたオリジナルのエプロンを製作する「糸と△洋裁店」をオープン。主にイベントなどで販売している。
(プロフィールは記事掲載時のもの)
インスタグラム
ito_sankaku
詳細URL
糸と△洋裁店Instagram
画像・テキスト資料出典
糸と△洋裁店Instagram

関連記事