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着心地がよくオシャレ心が満たされる「世界でたった一つの洋服」。装うこと、丁寧に作ることの楽しさを多くの人に

シンプルで着やすく、しかも洗練されていてオシャレ心が満たされる――そんな洋服を自分で作れる洋裁の楽しさを多数の書籍などを通じて発信しているソーイングユニット「Quoi? Quoi?(コアコア)」の久文麻未さん。「ものづくりが好き、洋服が好き」という情熱に支えられ自分らしく歩んできた彼女のこれまで、今、そして、未来への想いについてお聞きしました。

パタンナーの友人と共にユニットを組み「嬉しい驚き」を提案する洋服を二人でカタチに

ソーイングユニット「Quoi? Quoi?」を始められたきっかけはどんなことだったのですか?

もともと、ファッションが大好き、モノづくりも大好き。ずっと洋服づくりに関わっていたいという思いが十代の頃からあり、デザインの専門学校での学びを経て大好きだったアパレルブランドに就職しました。もう、毎日が楽しくて、楽しくて・・・・・・朝起きると「さあ、今日は何をしようかな」(笑)とワクワクしていました。バブル景気の時代だったこともあり、大らかな活気が社内にあふれていて、パターンも満足に引けない私でしたが、いろいろなことに挑戦させてもらいましたし、自分と同じように洋服、モノづくりが大好きな人々に囲まれて刺激と喜びに満ちた日々でしたね。だから、結婚、出産によって退職した時は、正直とても寂しい気がしました。

でも、ものづくりを続けたいという思いは消えず、家事や育児の合間を縫って自分なりのペースで手しごとをしていました。エプロンを作って、知り合いのところで販売してもらったり、手芸作家の先生のアシスタントをさせていただいたり、出版社の編集の方とのお付き合いでは知己を得ることができました。プライベートでは大病を経験するなど様々なことがあったのですが、つらい時に常に支えてくれたのは、モノづくりへの想いと、友人たちでした。


転機が訪れたのは、今から20年近く前。勤めていたアパレルブランドのOG会で、パタンナーである三代朝美さんと出会い、私がデザイン画を描き、彼女がパターンをひいて、私が縫うというソーイングユニットを作れば、何か面白いことができるんじゃないかと意気投合したんです。こうして誕生したのが、「Quoi? Quoi?」。Quoi?はフランス語で「何?」の意味で、「なんだ、これは」という嬉しい驚きを提案できるようなモノづくりがしたいという思いを込めました。自宅でワークショップを開くなどの活動をしているうちに、出版社の方からお声をかけていただき、初めての著書「デイリーウェア」を上梓することができました。それ以来、私たちの考える「着心地がよくて、しかも、着ていてワクワクした気持ちになれる」洋裁を手作りすることの楽しさを発信しています。

「Quoi? Quoi?」の洋服は、私のああしたい、こうしたい、というデザインをパタンナーの三代さんがくみ取ってカタチにしてくれます。さらに着るときれいになるように細かいラインまですごく考えてパターンを作ってくれるので、まさに、私ひとりでは決して出来ないお洋服です。振り返ってみると、もう20年以上も続いているのですが、三代さんが子育てに忙しい時期は、活動を休止するなど、あくまで自分たちのペースでやってきました。不思議なことに、三代さんと衝突した記憶はありません。いろいろな意味で、互いが互いを思いやっているのが、長続きの秘訣かもしれませんね。

「丁寧に作る」ことの楽しさ、出来上がったときの達成感を一人ひとりに伝えたい

「Quoi? Quoi?」の洋服とワークショップの特徴について教えてください。

「Quoi? Quoi?の服は着たときのラインがきれいだね」と言っていただけることが多いのですが、着やすいけれどただのブカブカではなくて、細部のラインにまでこだわってつくっています。着ていてストレスがなく、自分がステキに見えて、シンプルだから、コーディネートも楽しめる・・・・・・そんな洋服を作っていただきたいんです。例えば、着る人それぞれの体型にフィットするのが手作りの良さだと思うので、パターンは、S/M/L/2L/3Lとサイズを豊富に用意しています。また、生地や長さ、細部などを少し変えると表情が違うお洋服になるということも意識し、そのことを書籍でもお伝えするなど、自分らしいおしゃれを楽しんでいただけるようなモノづくりの提案を意識しています。

書籍づくりと共に大事な活動であるワークショップについては、教室というより、「一緒に作りましょう」という感じでしょうか。もう20年くらい通ってこられる方もいらっしゃるんですよ。本やネットを見ながら作っても、「やっぱり、ここがわからない」というところってあると思うので、そうした問題点をマンツーマンで取り除いて、「できた!」という嬉しさを得ていただきたいんです。いろいろな個性の方がいらっしゃるので、伝え方についても、私なりに工夫をしていますが、同時にどの方にもぜひお伝えしたいなと思っていることは、「楽しんで作る」ということと「丁寧に作業すること」の大切さですね。

モノづくりの醍醐味のひとつはできあがった時の達成感ですが、キレイにできたら、その喜びは、さらに大きくなると思うんです。ワークショップに参加された方などから、「『手作りには見えない!』と周囲から驚かれた」といったお声を聞くととても嬉しいですね。ちなみに、2019年10月に『大人の着せ替え布人形』という人形の本を出版したのですが、人形の洋服についてもリアルクローズと同様に作り込み、丁寧に縫うことの楽しさを体験していただけたらと思っています。



オンライン講座にも挑戦。人生を支えてくれた「モノづくりの楽しさ」を多くの人に

現在取り組んでいらっしゃること、これからの夢についてお聞かせいただけますか?

多くの方がそうだと思いますが、私にとっても、新型コロナ感染症の拡大は、これまで経験したことのない大きな変化です。「希望」と「ピンチ」の両方が同時にやってきた、というのでしょうか。

「希望」という意味で言いますと、今年の6月に上梓した『1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ』が予想以上にご好評をいただきました。新型コロナ感染症拡大に伴い、「おうち時間」が増えたことで、「手しごとをやってみたい」という人が増えたのではないかと思います。なんでも簡単に手に入る時代だからこそ、モノづくりの楽しさに気づいてくださることは本当に嬉しいことだと希望を感じています。
一方、対面のコミュニケーションや出会いが制限され、一人ひとりの人に寄りそって手しごとの楽しさを伝えていけるワークショップのような「場」が作りづらくなっているということは、とても寂しく、深刻なピンチだと感じています。

でも、落ち込んでばかりはいられません。実は、最近、オンライン上の動画サイトなどで、洋服づくりのプロセスやコツをお伝えする取り組みを始めました。ITにはまったく不慣れなので、わからないことだらけなんですが、ご協力いただける方々のお力を借りて、動画づくりに励んでいます。「Quoi? Quoi?」を支持してくださっている方はもちろんのこと、洋服づくりに少しでも関心のある方にも、楽しんで観ていただきながら、ノウハウやコツを習得していただければと思っています。

先ほど申し上げましたが、私は大病を経験しています。その際に支えになったのは、ものづくりへの想いと友人でした。モノづくりは、私の人生をとても豊かにしてくれました。だからこそ、できる限り、多くの方にモノづくりの楽しさを伝えることで「恩返し」がしたいんです。これまでは、書籍や対面のワークショップを通じて、楽しさを伝えてきましたが、今後は、ネットという新たなチャネルも積極的に活用して、より多くの方に向けて発信したいと意気込んでいます。
丁寧に作りあげることの楽しさや、その結果として「この世界にたったひとつしかないもの」がキレイに出来上がることの達成感を、一人でも多くの方に、ぜひ深く味わっていただきたいと思います。

製作中のオンライン動画は2020年11月にスタート予定とのこと。久文さんの丁寧な仕事ぶりが動画で見られるのはとても楽しみです。スタートが決まり次第こちらからもリンクを貼らせていただきます。楽しみにお待ちください。久文麻未さん、素敵なお話をありがとうございました。

※2020年10月時点の内容になります。

「大人の着せ替え布人形」「ほんのりスイート デイリーウェア」の掲載作品の詳細をてといとで作品公開しています→コチラ
プロフィール
久文 麻未さん
デザイナー、ハンドメーカー。
桑沢デザイン研究所、文化服飾学院などで学んだ後アパレルメーカーのデザイナーを経て独立。 パタンナーの三代朝美さんとソーイングユニットQuoi?Quoi?(コアコア)とハンドメーカーとして活動中。 著書に『デイリーウェア』『デイリードレス』『ストンとワンピース』『ほんのりスイート デイリーウエア』『大人の着せ替え布人形』『1日でぬえる!簡単楽ちんワンピース おしゃれなアッパッパ』など多数。(プロフィールは記事掲載時のもの)
※ワークショップのご依頼は久文麻未さんのインスタグラムのメッセージでご連絡ください。
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画像・テキスト資料出典
画像は全て(C) エムデザインオフィス

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