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これがフェルト?! その愛おしさに胸キュン♪フェルトアートの魅力のすべてを型紙に込めて。

何だか胸がキュンとして、その可愛いらしさに思わず手にとってみたくなる♪ アンティークな雰囲気のフェルト製の雑貨たち。フェルトで作られているのに、本物と見間違うようなディテールの細かさも見事です。そんなフェルト作品を作るのに欠かせないのが、「作品の型紙」です。今回ご紹介するのは、フェルトアート型紙作家 Antenna Antique(アンテナアンティーク)さん。どなたでも可愛くおしゃれなフェルトアートが作れるように、手順を丁寧に記したレシピと一緒に、フェルトアートの型紙を販売しています。どんな活動をされているのでしょう。お話を聞きました。

フェルトアートを考案し、その型紙と作り方を販売しています

「フェルトアートの型紙作家」ってどんなお仕事ですか?

食品や化粧品などの雑貨類のほか、ミシンやカメラなどアンティークの雰囲気のあるフェルトアートを考えて、型紙を作り、作り方を記したレシピと共にインターネットで販売しています。型紙にはアイロンでプリントできるラベルも1枚つけています。印字されたラベルをつけると、より本物に寄せた作品作りができます。
ラベルだけの別途購入や、ラベルがデザインされたPDFのダウンロードもできます。フェルトは手芸店などで手軽に購入できる色や厚さのものを使ってできるように型紙を作っていますので、どなたでも楽しんでいただけると思います。型紙の販売の時期などは特に決めていませんが、主に新作ができた時に期間を決めて販売しています。

作りはじめたきっかけを教えてください

第一子が生まれた時に、子どもに役立つアイテムを作りたいと、フェルトでおもちゃを作ろうと思ったことが始まりです。「フェルト」って簡単そうにみえませんか?切ったまま使えて縫いしろはいらないし、どこにでも売っています。針を持つのは小学校の家庭科以来だったこともあり、「フェルトならできるかな?」と手芸本を買ってみたのですが、そこに書かれている内容が理解できなくて(笑)。仕上がり図をもとに丁寧に説明は書いてあるのですが、知識がなさ過ぎて手順も専門用語も理解ができず、うまく作ることができませんでした。
そんなこともあり、自分流での作品作りを始めました。「アンティークな雰囲気の雑貨類をフェルトのおもちゃにしたら素敵だな」と思いオリジナルでデザインを考えています。


「デザイナーです」のひと言で運命が好転!?

結婚する前はWebデザイナーをしていました。もともと絵を描くことが好きで、20歳の頃は自分で描いたイラストをポストカードにして販売するなど、趣味でコツコツ活動していました。デザインソフトを使って作品を制作していたものの、就職をするならきちんと学んだ方が良いと専門学校へ。その学校のイベントでたまたま出会った方に、つい「デザイナーです」と自己紹介してしまったんです。その方はとても顔の広い方だったため、それをきっかけに次々と仕事を紹介してくださるようになりました。そうして経験不足なままフリーランスのデザイナーに。引き受ける仕事は初めてのことばかりで、勉強をしながら必死でこなしていきました。

でも、コンスタントに仕事をいただいたということは、仕事のクオリティが高かったということですね

そんな立派なものではありませんが、Webデザインだけでなく、イラストも描く、写真も撮る、DTPもやる、ということで「あそこに言えば何とか形にしてくれる」と、便利屋さんのようだったのだと思います。その後デザイン会社を設立し、フリーランス期間と合わせて約7年続けました。

会社を畳むことにしたのは、子どもが生まれるとわかった時です。当時は納品前には徹夜になることもあり、トラブルがあれば昼夜問わず対応に追われるようなハードな毎日だったので、落ち着いて子育てをしたいと思いました。でもいざ引退してみると、それまで夢中で仕事に取り組んできたこともあって、自分が何者でもなくなってしまった様な寂しさを抱き、「何かをやりたい」と出会ったのがフェルトアートでした。

「フェルト型紙を作る人」と「フェルト作品を作る人」

フェルトアートの世界は、私のように「型紙を作る人」と、その型紙を使って「作品を作る人」がいます。私自身は縫うのが上手なわけではないのと、飽き性で同じものを何度も作ることが苦手なので、型紙作家の仕事が好きで楽しんでいます。そして、作品を作ることが好きな方や得意な方、作ってみたい方などに、フェルトで作品を作り上げることを楽しんでいただけたらと思います。私の型紙で作ったフェルトアートの完成作品は販売権を承認していますので、作った作品を販売していただけるようになっています。

「アンティークの雰囲気」で、フェルトアートを作ろうと思ったのは?

子どもが生まれるまでは部屋のインテリアをシンプルでナチュラルな空間に、とこだわっていたのですが、子どもが生まれるとポップでカラフル、素材もプラスティックのものが増えていって。部屋がごちゃごちゃした印象に変わるのが残念だなぁと感じていました。床に転がっていても絵になるようなおもちゃや、飾っていても部屋の雰囲気を損なわない雑貨があったらいいなと思って……そこで思いついたのがアンティークの雰囲気があるおもちゃや雑貨たち。そこから「アンティーク」をコンセプトに考えを巡らせていきました。

フェルトアートの中身は綿や厚紙などです。例えば、ケチャップの容器などは、少し凹むような握り心地に。缶詰は少し縁が出っ張っていますよね、フェルトでも同じように表現します。そうした「ディテールの細かさ」は、型紙を作る上で大切にしています。本物とそっくりに作りたいわけではありませんが、おもちゃとして認識しつつも、本物を意識した細かいこだわりがあることを伝えたいと思っています。
私自身、作り方の本を読んで理解ができなかった経験があるので、型紙と一緒にお渡しする作り方レシピも理解しやすいよう丁寧に記すことや、特殊な材料は用いず、誰でもどこでも手に入る材料で作れるように、という点にもこだわっています。

フェルトって透明感がないので、デザインを考える時の感覚が絵を描く時と似ているんです。そのため色づかいなどを決める時に「もっとこういった色があればいいのにな」と思うことも。いつか自分でフェルトの色を染めて作るオリジナルフェルトにも挑戦したいと考えています。もちろん私が使う分だけ開発しても意味が無いので、型紙を買ってくださったみなさんも使っていただけるような方法で開発できたらな、と思っています。

ほかに、布絵本の型紙作りや、作品展へ出すオリジナルの作品の製作もされていますね

布絵本の型紙は、フェルトだけで作れるからとご購入いただく方も多いですね。布絵本はハンドスケッチの絵本のような味わいを残したいと思って、少し線がゆがんでいたり左右の大きさがちがっていたりとラフなタッチのデザインにしています。

2022年からは作品展への応募にも挑戦。この作品作りは私にとってのリフレッシュの時間です。通常の型紙作りは、どなたでも作品を作れる(再現できる)ことが必須ですから、作り直しや確認作業を繰返します。ですが、応募作品の製作は自分だけの作業で完結するので、失敗や偶然も楽しめて、より自由に作ることができます。


同じものを好きな人がいっぱいいるんだなぁって思えることが嬉しい

実は型紙作家を始めてから2年くらいして、念願だった自分の本を出版することができたんです。自分で出版社さまに企画を持ち込み、著書本を出せることが決まった時は本当に夢のような気分でした。それからほどなくしてフェルトから離れてしまい、気がつくと何年も経っていました。
応援をしてくださる方がいたのに挨拶もせずに辞めてしまったという負い目もあって、他の道にも挑戦しましたが結局フェルトに帰ってきてしまいました。もう誰も私を覚えてはいないだろうとSNSに作品をアップし始めると、「捜していて偶然SNSで見つけました!」「また作品が見られて嬉しいです」とたくさんの反響をいただき、みなさんのコメントに胸が熱くなりました。家族も復帰をすごく喜んでくれて背中を押してくれました。

私が好きで作ったものを、「私も好き!」と言ってもらえると、自分を認めてもらえたような幸せな気持ちに。私と同じ「好き」の感覚を持ってくれている方がいっぱいいるんだと思うと、すごく嬉しくなります。また、私の型紙を購入された方が、「今、オーダーを受けてアンテナさんの作品を作っているんですよ」と報告してくれた時などは、その方の向こう側にも私の作品を認めてくれる人がいるんだと感じることができます。あたたかく応援してくださる方々に応えていくためにも、今は、自分の好きなことを好きでい続けられるような活動を、丁寧に重ねていきたいと思っています。

※2023年4月時点の内容になります。

プロフィール
Antenna Antique(アンテナアンティーク)さん
1979年大阪府生まれ、大阪育ち。高校卒業後、自身のイラストをポストカードなどにして販売する活動を行いつつ、デザインの専門学校へ。その後Webデザイナーとして独立。フリーランスを経て会社を設立し、以後Webデザイナーとしてキャリアを積む。第一子出産を機に会社を精算し育児に専念。その間フェルトアートと出会い型紙作家に。2014年『20cmのフェルトで作る ナチュラルスタイルのフェルトままごと』(日本ヴォーグ社)を出版。数年間の活動停止後、2021年6月活動を再開し、SNSやインターネット上で、フェルトアート、フェルトままごと、布絵本の製作・型紙の販売のほか、オンラインビデオ講座を開講している。

著作物:『20cmのフェルトで作る ナチュラルスタイルのフェルトままごと』 日本ヴォーグ社(2014年)
受賞歴:「サンフェルトコンテスト2022」 準グランプリ(2022年)
(プロフィールは記事掲載時のもの)
アンテナアンティーク型紙販売・講座サイト
https://lit.link/anteantifelt
インスタグラム
アンテナアンティークインスタグラム
詳細URL
アンテナアンティーク
画像・テキスト資料出典
アンテナアンティーク

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